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740 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 00:45:34 ID:3FVALIDr

木乃香の声がいつも通りに戻り、刹那は少しほっとした。
しかし若干気になることがある。
今の木乃香のいる位置が、いつもの部屋でない事を受話器越しに感じたからだ。

「いまどちらに?」
『え? へ、部屋やけど?』
「・・・・いつもと周りの音が違うようなので・・・・思い過ごしならいいのですが」
『あ、う・・・・えーと・・・・』

珍しく木乃香が言葉に詰まった。
間違いなく刹那に何かを隠している。
いくら鈍感な刹那でも、さすがに気付いた。

「私がいないからといって、変なところにいるんですか?」
『ちゃ、ちゃうよ、変な所ちゃうけど・・・・』
「・・・・私が邪魔でしたら、もうそちらに戻りませんが」
『え?』
(あっ・・・・しまった・・・・)

言ってしまってから刹那はハッとした。
木乃香が隠し事をしてるからといって、何を拗ねてるんだろうと自分の頭を掻く。
木乃香だって隠したい事の一つや二つはあるのだから、ここは親友として黙っておくべきじゃないか。
龍宮にストーカーと言われた事を引きずっていた自分に呆れながら、刹那は慌てて弁解しようとした。

「おじょう・・・・」
『堪忍せっちゃん! 話すからもどってきてぇなぁ!!』
「うぁっ!?」

あまりの声の大きさにキーンと耳が鳴った。
予想外の取り乱しように、刹那がぽかんとする。
その間にも木乃香は取り乱しいて、どこかへ向かって走っている音が受話器越しに聞こえた。

『ご飯ちゃんと作るし、お風呂も一緒に入ったるー! ほんで夜も一緒に寝て――』
「お、おちついてください! ていうか周りに誰もいないでしょうね!?」
『誰か? 高畑先生がおるけどー!?』
「え、ちょ、声を抑えて・・・・って、え? 高畑先生?」


741 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 00:53:59 ID:3FVALIDr

木乃香の口からでた名前に、刹那は疑問を感じた。
高畑は先ほどまで一緒に食事をしていたはずだ。
高畑は転移魔法は使えないはずだし、まだ学園に戻るには早すぎる。
もしや・・・・。

「・・・・お嬢様? もしかして・・・・来てます?」
『あ・・・・しもた・・・・』
「・・・・・・・・いつの間に」
『ばれてもうたぁ〜・・・・』

予想外すぎる展開だが、こういったドタバタは麻帆良学園ではよくあること。
さすがの刹那にも、大分抗体ができていた。
さてどうしたものかと刹那は考える。
昔よりも随分とおてんばになったと学園長が言っていたが、まさかここまでとは。
教師たちの旅行についてくる生徒だなんて、そこいらには絶対にいないだろう。
というかどうやって潜り込んだのかが気になる。

(とりあえず・・・・学園長に報告しておくべきか)

木乃香の祖父である学園長に知らせておけば、とりあえず大事には至らないだろう。
刹那は木乃香に居場所を尋ねようと、携帯に再び意識を戻した。

「お嬢様、今どちらに?」
『い、今な・・・・その・・・・な、なぁ・・・・ドア、あけてくれる?』
「はい?」
『部屋の前、きてもうた』
「・・・・え!?」

刹那は飛び起きて、部屋のドアについている覗き窓を覗いた。
・・・・間違いなく、木乃香がいた。
浴衣姿でぜぇぜぇと息を切らし、覗き穴の方を見ている。


742 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 01:02:58 ID:3FVALIDr

「――本当にいますね・・・・ここまで走ってきたんですか?」
『なぁ、開けて? こないに近いのに電話なんておかしいわー』
「・・・・ぷっ、初めて電話したとき部屋から走ってきた人が言う事です?」
『だ、だってあんときは嬉しかったんやもん!』

刹那が笑いながら話すのは、電話番号を教えてもらった日のことだ。
自室にいる木乃香に様子を聞こうと電話したとき、木乃香は感極まって部屋に駆け込んできた。
これじゃあ電話の意味がないですよ、と笑い合ったのもいい思い出。

『なぁ、許してー?』
『ふふ・・・・さぁ、どうしましょうか?』
『なんや今日のせっちゃんは意地悪や〜〜〜』

さっきの台詞を真に受けたらしく、木乃香は涙目で縋ってきていた。
このまましばらく放置してみようか、と刹那に悪戯心が疼く。
しかしすぐさま自分の本職を思い出してドアのカギを外した。
今は休みだが、本来は護衛というのを危うく忘れる所だった。
風邪をひかれては困る。

「こんばんは、お嬢様・・・・っ」
「・・・・なに笑っとるん?」
「いえ、つい、思い出し笑いを・・・・それよりどうやってここに?」
「おじーちゃんに連れてきてもろたんよ」

そういえば・・・・学園長は学園関係の仕事で遅れて到着といってた気がする。
なるほど、遅れてくる学園長に付いてくれば他の魔法教師には変な目で見られることもない。
しかし電話であれだけ叫んで走り回ってたら、さすがに変な目で見られただろうに・・・・。

「ウチ、まだ働けへんからな・・・・こっそり付いてくるしかあらへん」
「そんな無理して付いてこなくても・・・・明日の夕刻には戻りましたし、用事があるなら電話で――」
「せっちゃんの事ストーカーしたくてしゃーないんやもん。それに旅行やなんてめったに出来けへんやん」
「うっ・・・・」


743 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 01:09:04 ID:3FVALIDr

木乃香はニコッと笑いながら言った。
しかし刹那はストーカーの文字に、ちょっと困った顔になってしまった。

「嫌やった?」
「い、いえ、嬉しいのですが・・・・! ・・・・私がお嬢様のストーカーだったので・・・・」
「ストーカーやったの?」
「・・・・護衛だと、言い張りたいのですが――あっ」
「ひゃ」

話の最中に、廊下から大勢の話し声が聞こえてきた。
どうやら宴会も終わったようで、教師たちが戻ってきたようだ。
刹那は無意識に木乃香を引っ張って部屋に引き込んだ。
幸い教師たちは誰も気付かなかったようで、何事もないかのように部屋の前を通り過ぎていく。

「・・・・ウチのこと隠す事ないんやないの?」
「酔っ払いに見つかったら厄介だと、龍宮が教えてくれましたからね」
「ふーん・・・・でも、なんか得したわ」
「え? ・・・・あっ!?」

言われて初めて、無意識に木乃香を抱きしめていた事に気付く。
慌てて離そうとしたが、今度は木乃香に抱きしめられていた。

「そないにウチの事独占したいん? しゃーないなぁ」
「い、いや・・・・そうでなくて・・・・!」
「もー照れてかわええー!」

一際強く抱きしめられ、刹那は呻く。
先ほどまでの形勢は逆転。
木乃香が刹那から離れる頃には、完全に木乃香が主導権を握っていた。


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