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99 名前:記憶喪失[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:39:16 ID:hH8Mhz7r

一足遅れて明日菜と龍宮が駆けつけた。
龍宮が魔物を誘導し、明日菜は刹那を抱えて木乃香の手を引く。

「せっちゃんが・・・・せっちゃんが・・・・!」
「このか、アーティファクトは!?」
「部屋や・・・・置いてきてもうた・・・・!」

木乃香は二人を見失わないように慌てて出てきた為、携帯やカードなどを全て部屋に忘れてきてしまっていた。
魔法を使う為の杖もなく、今の木乃香は完全に無力だった。

「助けを呼ぶしかないわね・・・・」

魔物から十分に離れた場所で、明日菜は携帯で連絡を入れる。
木乃香は何もかもを置いてきてしまった事を悔いながら、頭から血を流す刹那を見守る事しかできなかった。

*

刹那の傷は大して深くは無かった。
骨にも異常は無く、魔法の治療により傷口はすぐに塞がれた。
・・・・しかしただひとつ、何よりも大事な物が失われていた。

「もう一度聞くね、君の名前は?」
「・・・・すみません、わかりません」
「さっきの子の事も、僕のこともわからないかな?」
「・・・・はい」

刹那が目覚めたとき、傍には木乃香がいた。
しかし刹那は木乃香を認識できなかった。

100 名前:記憶喪失[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:40:43 ID:hH8Mhz7r

「目を覚ます前の事が思い出せないんだね」
「はい・・・・」

高畑はそれだけ確認すると、刹那に安静にするように言って部屋を出ようとする。

「あ、あの・・・・!」
「ん? どうしたんだい?」
「さっきの・・・・このかさんは・・・・?」

目覚めてから初めて話した人という事もあり、刹那は木乃香の事が気になって仕方がなかった。
"記憶が無い"と伝えた時の木乃香の悲しげな顔が刹那の頭から離れず、刹那は罪悪感を感じていたのだ。

「彼女なら大丈夫。また会えるよ」
「そう・・・・ですか」
「じゃあ、ここで少し待っててね」

そう言って、高畑は病室を後にする。
少し離れた休憩所には木乃香と明日菜、龍宮が待機していた。

「あ、高畑先生! せっちゃんは・・・・!?」
「日常生活には問題ないよ。ただ・・・・"自分に関する記憶"が全て消えている」
「・・・・自分の事や周りの事が思い出せない、という事か」
「・・・・そ、そんな・・・・」

刹那が失った大切なもの・・・・それは"記憶"だった。
木乃香はあまりの現実の惨さに、それ以上の言葉を続ける事ができなかった。

101 名前:記憶喪失[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:42:31 ID:hH8Mhz7r

「か、回復の見込みは?」
「魔法ではなく怪我が原因だからね・・・・催眠術も施してみたけど、効果はなかったよ」
「・・・・自然に思い出すのを待つしかない、か」

今回の件に絡んだ三人は、成す術がなく肩の力を落とした。

「・・・・ウチのせいで・・・・!」
「このかのせいじゃない・・・・ちゃんと出かける前に言わなかった私たちが・・・・」

静寂の中、再び木乃香が口を開くが、出てくるのは後悔の言葉しかない。
それは明日菜も同じだった。

「今更嘆いていても現状は変わらないぞ」
「・・・・っ!」

沈み込む二人を前に、龍宮は冷たく言い放った。
その言葉に明日菜は龍宮を睨み、木乃香は驚いた顔で龍宮を見つめる。

「・・・・そう睨むな。今やれる事をやれと、言いたいだけだ」
「今、やれる事・・・・?」
「"一般人になった刹那"をどうするか、考えないとな」
「龍宮君のいう通り、桜咲君は魔法に関しての記憶も無くしてしまっている。今までの生活は無理だろう」

刹那の今までの生活・・・・すなわち、護衛と退魔師の仕事をこなす生活の事。
しかし力の存在を忘れた刹那に、そのような仕事はできない。
身寄りが無く、仕事もできなくなった刹那は生きる術がないも同然である。

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