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293 名前:Alcohol[sage] 投稿日:2007/08/28(火) 18:07:10 ID:kcQYI8bP

慌てて刹那は立ち上がり、台所に向かおうとした。
しかし、ここに来て自分にアルコールが入っている事を思い出した。

「――うぁっ!?」
「せっちゃん!?」

足腰に力が入らず、よろけてしまったのだ。
刹那はなんとか壁に手をつき持ちこたえたが、普段ないこの異変に木乃香が驚いてしまった。

「せっちゃん、どないしたん!?」
「あ・・・・えーと・・・・」

まさか護衛であり未成年である自分が、"お酒で酔ってます"だなんて言えるはずが無い。
口ごもる刹那に、木乃香はさらに誤解をしてしまった。

「昨日のお仕事で怪我でもしたん!?」
「え? いえ違――」
「言い訳はええから、見せてみ!」
「――へっ!?」

慌てた木乃香は刹那の服に手をかける。
力の入らない刹那は、その衝撃で尻餅をついてしまった。
刹那は力の入らない両腕で、必死に木乃香を抑えて白状した。

「あの、本当に違います・・・・っ! テーブルの上を見ていただければ・・・・っ」
「え?」

テーブルを振り返る木乃香。
そこにはボトルが一本と、空のペットボトルが置いてあった。
木乃香はボトルを手に取り、中の匂いを嗅いでみる。

294 名前:Alcohol[sage] 投稿日:2007/08/28(火) 18:08:01 ID:kcQYI8bP

「これって・・・・お酒?」
「ご、ごめんなさいっ」

母親に悪戯がばれた子供のように、刹那は土下座して謝る。
木乃香はそんな刹那に手を伸ばす――ビクッと震える刹那。

「・・・・叩いたりせんから安心し?」
「あ、いえ・・・・! そんなつもりでは・・・・」
「ええから。・・・・あんま心配させんといてな?」

木乃香は安堵した表情で刹那の頬を撫でた。
刹那の頬が赤いのはきっとお酒のせい。
実際にはもう一つ原因があるのだが、刹那は自分の心を誤魔化した。

*

それからの二人は、いつも通りだった。
一緒にテレビを見て、他愛のない話をして・・・・。
でもそんな日常が、今日は少し変わった。

(せっちゃん・・・・寝てもうた)

木乃香がテレビに夢中になって話しかけなかった間に、刹那は眠りに落ちていた。
アルコールのせいなのか、テーブルに顔を伏せて眠る刹那の姿は珍しい。
いつしか木乃香はテレビの電源を切り、眠る刹那を見ていた。

(可哀想やけど・・・・風邪ひいたらあかんからな・・・・)

しばらく刹那を見ていた木乃香だったが、刹那の身を案じて刹那を起こす事にした。
刹那の肩をゆすり、名を呼ぶ。

295 名前:Alcohol[sage] 投稿日:2007/08/28(火) 18:08:59 ID:kcQYI8bP

「せっちゃん、ほら・・・・ちゃんとベッドで寝ような?」
「・・・・あ・・・・すみません・・・・うーん・・・・」
「せ、せっちゃん?」

刹那は寝惚けた声を出して、木乃香に寄りかかる。
木乃香は完全に全体重をかけられた為に、耐える事ができず床に押し倒された。
刹那の身体は少し冷えていて、その下がった体温を戻そうとするかのように木乃香に身体を摺り寄せる。

(はわわ・・・・////)

木乃香は刹那の行動に戸惑いながらも、これ以上身体が冷えないようにそっと抱き締めた。
さほど時間もたたず、再び聞こえてくる寝息。
・・・・身動きがとれなくなってしまった。

「・・・・どないしよ・・・・」

木乃香の腕力では、刹那を抱え上げる事はできない。
今日は龍宮も戻ってこないと聞いている。
まさにお手上げ状態だった。

(このままやと風邪引いてまうな・・・・起こさないように、そーっと・・・・)

二度も起こすのはさすがに可哀想だと思った木乃香は、この場で寝かせる事にした。
刹那に抱きつかれたまま、ベッドの方に手を伸ばす。
そしてベッドにあった掛け布団を引っ張り出して、それを自分ごと刹那に掛けた。

(・・・・昔も、こないな事やったなぁ)

木乃香は刹那の頭を撫でながら京都にいた頃の事を思い出す。
そして掛け布団の中で刹那を抱き寄せて、目を閉じた。
やがて寝息は二人分になり、外では未だに雨が大きな音をたてて降っていた――。

296 名前:Alcohol[sage] 投稿日:2007/08/28(火) 18:11:28 ID:kcQYI8bP

*

幼い頃の二人は、お互いが初めての友達だった。
二人とも初めての友達が嬉しくて嬉しくて、それはもう連日のように楽しく遊びまわっていた。
そんなある日の事。
外は雨で、二人は屋内で遊んでいた日の事だった。
家の中で走り回る中、木乃香は家の綺麗な骨董品に目を奪われていた。

『・・・・あれ? せっちゃん? せっちゃんどこやー?』

いつもなら傍にいて離れない刹那が、突然消えてしまった。
一人になる孤独を知っていた木乃香は、当然刹那を探し回る。

『どこや、せっちゃーん! あ、クロちゃん。せっちゃんしらへん?』

木乃香が話しかけたのは、屋根下で寝ていた黒い犬。
前に木乃香に襲いかかった野良犬である。
しかしその際に、木乃香を守ろうとした刹那に竹刀で一打入れられて、すっかり大人しくなった。
今では刹那に服従していて、さらに近衛家に飼われている。
刹那にとっても木乃香にとっても、第二の友達となっていた。

『わんっわんっ!』
『そっちなん? あっ』

犬は汚れた足のまま、家の中に入り込む。
そのまま家の奥に一気に駆け出して、すぐに見えなくなった。

『おいてかんで〜!』

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