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11 名前:無くした物[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 19:57:44 ID:ogY01DJh

「――せっちゃん」
「っ! お嬢様・・・・」
「ここに、おったんや」
「あ、はい・・・・ぁっ・・・・!」

変な事を考えてた時、お嬢様がやってきた。
いきなり現れたお嬢様に対して、私はとっさに右手を隠す。
自分の未熟さで負った怪我で、お嬢様を心配をかけさせたくなかったから。
幸い、お嬢様は気付かなかったようだ。

「なぁ、せっちゃんは・・・・一人が好きなん?」
「え?」
「せやかて、今日も一人やし・・・・迷惑やった?」

人前では・・・・特にお嬢様の前では、いつも通りを心掛けていたはず。
それなのにお嬢様は、私の異常を感じ取っていた。
いつものお嬢様なら問答無用に詰めてくるこのわずかな距離を、お嬢様は踏み込むのを戸惑っている。
寛大な心で周りを惹きつける彼女が・・・・今はとても小さく見えた。

「いえ、一人の方が気楽ではありますが・・・・好きではないようです」
「え?」
「・・・・そろそろ、お嬢様の元に戻ろうかと思ってましたから」
「ほんま?」

演技ではなく、心の底からそう思う。
私が一歩距離を縮めるとお嬢様の表情は明るくなり、残りの距離は一気に縮まった。
お嬢様は私の汗を拭いながら、いつもと同じ調子で話しかけてくる。

「ネギ君とも修行してないんやってな。エヴァちゃんとせっちゃんで一緒に教えるんは、ダメなん?」
「師は複数いるべきではないんです。それに私は未熟者ですから・・・・」
「・・・・せっちゃん、十分強いと思うけどなぁ?」

12 名前:無くした物[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 19:59:11 ID:ogY01DJh

いつものお嬢様の笑顔。
それを見て私は、顔が熱くなるのを感じた。
お嬢様の表情一つでここまで動揺する自分・・・・やはり、まだまだ未熟。

「もっと・・・・強くなりたいんです」
「・・・・なぁ、せっちゃん・・・・なんでそないに、焦っとるん・・・・?」
「えっ・・・・」

最初お嬢様が何を言っているか、わからなかった。

「ちゃう・・・・? ウチには、焦っとるように見えるよ・・・・?」

そう言われて考えてみると・・・・確かに私は焦っているのかもしれない。
なんでお嬢様は、私以上に私の事がわかるだろう。
私の動揺と疑問にお嬢様は気がついたのか、お嬢様の口調は優しくなる。

「どないしたん・・・・? 言うてみ?」
「それは、その・・・・・・・・」
「やっぱ・・・・ネギ君と明日菜?」
「・・・・! ・・・・そうかも、しれません・・・・御二人に追いつかれるのも時間の問題、ですから・・・・」

珍しく出た弱音。
私は幼少の頃からもがいて、強くなってきた。
長い年月をかけて、多くのものを犠牲にして。
それを・・・・これからの数ヶ月、数年で追いつかれてしまう。
私が犠牲にしたものを失わずに強くなっていく彼らは、もうすぐ私の手の届かないところに行ってしまうのだ。
その恐怖と焦りが私の中にあった。

13 名前:無くした物[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20:00:17 ID:ogY01DJh

「せっちゃんも一緒に強うなればええやん?」
「私は・・・・もう、急激に伸びる事はありませんし・・・・」
「なんで?」
「それ、は・・・・」

理由は簡単。
これ以上伸びるために大切なものを、私は既に捨ててしまったから――。
その"大切なもの"が何かは、私でもよくわからない・・・・。
わかっていたら手にいれようと思うだろう・・・・。
その意をなんと伝えればいいかわからず、私は黙ってしまった。

「――なぁせっちゃん、ウチと一緒に修行せーへん?」
「・・・・え?」

黙ってしまった私に、お嬢様は笑顔でそう言った。
だけど私は魔法は専門分野ではない。
それともお嬢様は、剣を教えろと言ってるのだろうか?

「楓ちゃんとクーちゃんはな、ずっと一人で修行してたんやって」
「・・・・そう、ですね」
「そんでな、今みたいにみんなで修行すると楽しいし・・・・それに、強くなれるって言うとったんや」

楽しくて、強くなれる?
幸せの中にいて、楓達は強さをも手にしている?
私が思い悩んでいたことを楓達が手に入れていると聞き、興味が沸く。

「楓達は、他に何を言っていたのですか?」
「・・・・楓ちゃんもクーちゃんもずっと一人で修行してたから、自分に欠けてる物がわからなかったって言うとった」

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