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625 名前:1/6  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/16(日) 04:01:14 ID:6ueMKqC5
「好きなんや……せっちゃんのこと……。」

夏風が,火照った頬を撫でていく。
突然のお嬢様からの告白は,私の世界を変えた。

これまでずっと抑えてきた感情…。それを意識的に避けてきた。
今,自分は十分にお嬢様の近くにいる。それだけで十分だった。
以前の自分を省みれば,それがどれほどのことか存分に身に染みた。

しかし,お嬢様が私にかけた言葉,それは私の抑えていた感情を呼び起こすものだった。
私にそのことを告げた時のお嬢様の表情は,困ったような,でも嬉しそうな…。
わずかに高揚した頬は,恥かしそうに私にはにかんで見せた。
まるでその返事はわかっているとでも言うように,不安な素振りは見せず,お嬢様は誇らしげに私にそう仰った。

「……せっちゃんは?」

お嬢様は静かに微笑んで私に問い返す。お嬢様は私に何をお望みなのか?
私は自分の気持ちを言葉にすることが出来ず,黙して立ち竦んでしまった。
手が震える。足が……竦む。
どれほどの強敵を前にしても,闘志を打ち破られることは無かった。
どうしてお嬢様は私をこれほどまでに動揺させるのか。
動きを見せない私に,お嬢様は困ったように私の顔を覗きこんで言う。

「困らせてもうた?」

屈託の無い笑顔に,私は乾いた喉から無理やりに声を出した。

「……いえ…,その…」

626 名前:2/6  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/16(日) 04:02:14 ID:6ueMKqC5
でも,なにも言葉にはならなかった。
お嬢様は,私の手をとり,もう一度お尋ねになる。

「どうなん……せっちゃんは…。」

お嬢様の瞳は,私の心を見透かしているようで,何も言わないまま終わらせてくださる雰囲気はなかった。
これまでに,一度として認めるわけにはいかなかった。お嬢様への恋慕の情。
決して許されるはずも無く,お嬢様を困らせるだけだと思い込んで,抑えつけてきた。
でも,その反面,胸の奥でずっと暖められたその感情は,決して消えることは無かった。

お嬢様のたおやかな手は私の両手を握る。やわらかな温もりが私を包み込む。
胸が高鳴るのを感じた。

認めてしまっても良いのだろうか?
私はお嬢様を恋い慕っている。そしてお嬢様も私のことを…。
お嬢様は,私にそのことを教えてくださった。
そして,私に”素直になれ”と勧めている。

「私は……」

搾り出すように言葉を紡ぐ。
お嬢様は私の想いを受けとめてくださると仰っているのだ。
胸の奥から耐え忍んだ感情が,止めど無く溢れ出てくる。

「私も…お嬢様をお慕いしております。」

もう……抑えていられない。貴方が好きです,お嬢様。誰よりも貴方を…。

「貴方が……好きです。」

627 名前:3/6  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/16(日) 04:03:05 ID:6ueMKqC5
耳まで熱くなるのを感じた。情けなくも,こみ上げた感情のせいで目頭が熱くなった。
一筋流れた滴をお嬢様は,そっと指で拭って私に優しい笑顔を向ける。

「やっと…言ってくれた。」

そう言うと,お嬢様は私の背に腕を回し,私の胸に体を預けてきた。

「せっちゃん……大好きや。」
「お嬢様……。」

私は,二度も言うことが出来ず,胸の中のお嬢様をそっと抱き締めた。

◇◆◇

あれから,いくらか時間が経った。季節も変り,秋の風が心地良い。
お嬢様との距離は,以前とそれほど変らない。
でも確かめ合ったお互いの感情が,二人の間の空気を満たしてた。
かつてあった遠慮がちな一面は,お互いの思いやりに満ち,以前とはまた違う充実した関係を築いていた。

でも,人というのは欲深い存在で,手にした幸福に満足すると,次の欲望が姿を現してくる。
お嬢様の温もりを知ってしまった今,その温もりを一層感じたいと願う。
一方お嬢様は,以前から私が戸惑うくらいのスキンシップを日常的に行なわれる。
むしろそれは一層過激化しており,私はいつも理性を総動員して冷静さを保つのに必死だった。
でも,それは私のとは違う。お嬢様は,私が困るのを楽しんでおられる節がある。
私を煽って,そして茶化して…。
このままプラトニックな関係をご希望なのだろうか,それとも…?

私は対面に座るお嬢様を見詰めた。いつからか日課になった私とお嬢様でのお茶会。
以前はお嬢様のお部屋に呼んでくださっていた。アスナさんやネギ先生も一緒で。
でもいつからか,場所は私の部屋に変更された。
そして,龍宮の不在のときにはお嬢様がお泊まりになることもあった。

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管理人:虚武僧
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