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509 名前:486 続き[sage] 投稿日:2007/09/11(火) 01:17:05 ID:VsAWyAVu
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「…で、結局帰ってきてしまったと」
「…あぅ…」
木乃香は半分涙目になりながら頷く。正面にいる明日菜が困ったようにため息をついた。
結局刹那はその後教室には戻って来ず、
仕方なしに木乃香が自分の部屋に戻ったところ明日菜がいた。
どうやらバイト先から「今日は人手が足りているので、明日にしてほしい」
と頼まれたらしい。
茶を囲み、テーブル越しに泣く木乃香の頭を明日菜がよしよしと撫でてやる。
「刹那さんもいきなりで吃驚しちゃっただけじゃない?嫌われてなんかないわよ」
「でも…せっちゃんあんま触られるの好きやないみたいやし、
ウチがあんなことしてもうたら…ウチのことまた避けてまうかもしれへん…っ」
触られるのが好きじゃないというより、耐性がないだけなのだろう。
明日菜は困り果てて自分の頭をごしごし擦る。
あまり女同士のスキンシップに慣れていない刹那にとって、
木乃香とのでこ合わせは確かに厳しかっただろう。だが、久しぶりに幼馴染と
話せるようになってスキンシップを取りたくなってしまう木乃香の気持ちもよく分かる。
第一、今回のことは木乃香が意識してやったことではないし、
どっちに原因があるとも言えない。
「…せっちゃん、またウチと話してくれへんようになったらどうしよ…」
「そんなことないって、木乃香」
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510 名前:486 続き[sage] 投稿日:2007/09/11(火) 01:18:39 ID:kRfVJuvo
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木乃香は本気で沈んでしまっている。いつも笑っている木乃香が泣いていると
どうも落ち着かない。明日菜は今日は木乃香が泣き止むまで夜通し慰めるぞ、と心に誓った。
まだ時刻は午後2時半なのだが。
と、急にドアをトントンとノックをする音が聞こえた。
「はいー?」
「明日菜さん、あの、刹那ですが…お嬢様はいらっしゃるでしょうか」
ドアの向こうから聞こえてきたのはまごうことなき刹那の声である。
と、木乃香が急に顔を上げておろおろしはじめた。
(ア、アスナ〜ウチどないしよ〜…あわわ)
(ちょっと木乃香、いいじゃないちゃんと話せば。席はずしててあげるから!)
(む、無理や…泣いたとこせっちゃんに見られとうない〜!)
「明日菜さん?入ってもよろしいでしょうか」
((ああ!!))
木乃香は慌ててクローゼットの扉を開け、中に隠れた。
(ちょっと〜!?)明日菜が驚いて止めようとするも、もう一度ドアがノックされる。
(…ああもう!!)半分ヤケになりながらも、明日菜はドアを開けた。
「よ、ようこそ刹那さん。どうしたの?」
「…?なんだか明日菜さん、汗かいてませんか?」
「ななな何でもないのよ〜!さ上がって上がって!!」
「?お邪魔、します」
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511 名前:486 続き[sage] 投稿日:2007/09/11(火) 01:19:59 ID:kRfVJuvo
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刹那が小さく会釈をして部屋に入ってきた。クローゼットの中の木乃香は、
息をひそめて隙間から様子を伺う。
いつもの刹那なら気配で気付きそうなものの、本当に風邪らしい。
あまり気にしたふうもなく明日菜が勧める座布団に正座で座った。
「…で、刹那さん、今日はどうしたの?」
「…いえ、少し、お嬢様に申し訳ないことをしてしまって」
明日菜が問うと、刹那の顏に暗い陰が落ちる。いきなり核心か、と明日菜は意気込んだ。
何も知らないような顔で「何?」と訊いてみる。
刹那は最初は言いにくそうにしていたが、やがでぽつりぽつりとさっきの出来事を話し始めた。
「…というわけで、お嬢様は私の風邪の心配をしてくれたんですが…私は逃げてしまって…」
「まぁ、木乃香にも悪気があったわけじゃないしさ、刹那さんにも問題はなかったって、それは」
「そうでしょうか…」
刹那が申し訳なさそうにうつむくと、クローゼットから呻くような物音がした。
少しだけ木乃香に殺気を飛ばし、明日菜は続ける。
「あのさ、ひとつ訊いていいかな…。刹那さんにとって、木乃香ってどういう存在?」
「え!えっ…と…」
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512 名前:486 続き[sage] 投稿日:2007/09/11(火) 01:21:42 ID:kRfVJuvo
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驚いたように背筋をピンと伸ばす刹那。生真面目な性格が伺えるなぁ、
と明日菜はしみじみ思った。
「…お嬢様とは昔のように対等な立場で接することは出来ませんけど、も…」
「も?」
「…私にとって一番大切なお方ですし、命を賭してお護りしたいとも思います。
お嬢様のお望みになることなら、微力ながらそれに応えたいですし…。
…今回のことも、私が不甲斐なかったから起こったことなんです。
お嬢様は私に接しようとしてくださっているんですし」
「あ、分かるんだ?」
「はい。そ、その、そういったお心づかいもすごく嬉しいですし、…」
刹那が再び赤くなってうつむく。そこに、さっきまであった陰りはあまり感じられなかった。
「刹那さん…」明日菜が少し感動しているところで、後ろのクローゼットの扉ががたんと開いた。
「せ、せっちゃん〜!!」
「お、お嬢様!?どうしてそんなところに!?と言うか、今の話全部聞…!」
呆気に取られる明日菜をよそに、焦りまくる刹那に木乃香ががばりと抱き着く。
「ゴメンな、ウチ…ウチ…!!」
「う、あぁ…」
刹那が呻きながらもとりあえず木乃香の頭を撫でる。
しかしその顔はもう林檎も顔負けなほど赤い。
明日菜は安堵と呆れが入り交じったため息をついた。
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