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12 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 09:12:07 ID:kv8HJnFx
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「いえッ!!滅相もない!!!」
「なら大人しくそこ座り?朝ご飯作ったる〜」
ふんふん、と楽しそうな鼻歌と共にキッチンへと歩みを進める後ろ姿を見て溜め息をついた。
止めたって無駄なんだ。
おっとりした物腰からは想像も付かない位頑固なのだから。
ここは有り難くお嬢様お手製の朝食を戴こう。
…はは、
………敵わないなぁ。
きっと1限の途中からなら間に合う。
カチャカチャと食器の鳴る小気味いい音を聴きながら思った。
……もしかしたらあの声は…、お嬢様だったのかもしれない。
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13 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 09:13:48 ID:kv8HJnFx
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*****
届いた手紙に木乃香はかぶりを振った。
状況は芳しくない、とその流暢な筆文字が伝えている。
幾ら現頭主とは言え、詠春は国を治める地位に君臨しているわけではないし、一族の意向を決定し得る絶大な権限を有する者でもない。
勿論、大きな存在ではある。
しかし同時に一族を纏め従わせる立場。
それはつまり常に保守的な立ち位置でなければならないことと同義だ。
詠春は若い。
だが、その明敏かつ温和な性格が評価され現在の位置に就くに至ったのだ。
その若さと人望が詠春以前の古い勢力にとって目の上の瘤だったのは想像に難くない。
何より彼は新しい考えを持つ人間だった。
近衛家の古の慣習も詠春によって大分変貌を遂げている。
………その詠春が、刹那との本契約の意向をやんわりと折り曲げてきた。
思っていた以上に反発が強いのか、単にそれを見越しただけなのか。
反対されるだろうとは思っていたが、こんなに長い手紙で以てそれを伝えてくるとは。
認識の甘さに眉間に皺が寄りそうになるのを押し止どめる。
代表である頭主に反対されるということは一族がそれを望んでいないのだ。
詠春は顔つきからも分かるように非常に温和で思いやりのある人物だ。きっと会合の場で公表はしていまい。
だからこそこんな手紙を寄越してきたのだ。悪いことは言わないから諦めろ、と。
そうでなければ自分などとっくに京に移されているか下手したら幽閉だ。
父の懐の深さに改めて感謝しつつも、木乃香はやはり気持ちは揺らがないことを皮肉にもこの手紙で確信していた。
手紙はこう締められていたからだ。
『親としてお前の気持ちは最大限尊重したい』
それをそのまま受け取る程木乃香は馬鹿ではない。
しかしこれは父なりの自分へのメッセージなのではないか、と考えたのだ。
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14 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 09:15:02 ID:kv8HJnFx
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つまり。
頭の堅い連中を納得させてみろ、との挑発とも取れるメッセージ。
それが正しいかどうかはわからないが、どこか食えない父のやりそうなことだと思った。
カレンダーを見る。
もうじき連休が来る事を知らせる赤い縁取り。
丁度いい、会合の場で言わずとも父には自分の気持ちを底から話しておくべきだろう。
そう結論付けると木乃香は手紙を大切そうに引出しに終った。
その引出しの中には、あの日刹那にはらはらと舞い落ちてきた桜の花びらも含まれていた。
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