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129 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/07(木) 23:03:01 ID:q63VShyV
重い扉を開け、見たもの。
蹲る父の姿、それを取り巻く見知った顔。
取り巻くとは言っても護衛のような空気ではない。
護衛どころか……むしろ……

「お、とう……さ……ま……?」

木乃香は苦悶の表情を浮かべ自分に手を伸ばす詠春に近寄ろうとした。

「き…、ては……、
い……ッ、
こ………の、」

切れ切れの言葉を発するその口からは血が滲んで見える。
そんな父を見知った者達は涼しい顔でその動向を窺うかのように眺めていた。

……どういうことなのかはわからない。
倒れ血を流す父。
取り囲む僧兵。
父を侮蔑するかのように冷めた目で見つめる審議会の面々。

………異常な何かだけは、感じ取れた。


130 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/07(木) 23:03:25 ID:q63VShyV
「何を……して、おられるのですか……………」

奥の間の暗がりに浮かぶように佇む審議会の長に向かい問う。
長は意図の掴み難い声で少し笑った。

「疵の癒えた翼の姫君をお迎えに上がろうと……ふふ……提案しただけなのですがね」

「つ、ばさ………?」

「そうしたらこの有様だ」

見れば僧兵の一人に腕に白い布を巻き付けた者がいた。
その布には明らかな血の滲み。
武者鎧を貫通したのだろうか、その出血量はかなりのものと木乃香にさえ容易に推測出来た。

「頭主ともあろう者がね、……ふふ……幼児でも知っていることを守らぬので少し叱っている所なのですよ」

「………何を、したと………」

血の気の失せた顔でそれだけ絞り出す。
決定的な何かがおかしい。だが何が起こっているのか見当も付かず、木乃香はへたりこみそうになる脚を懸命に支えていた。


131 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/07(木) 23:03:49 ID:q63VShyV
「……約束をね?
十年もの時を掛けた約束を今更になって……ふふ、守らぬと云うのです。
………………少し、頭に来てしまいましてね、ふふ。
饒舌な上言うことを聴いて貰えないので少々寡黙になって戴いているのです」

終始薄気味の悪い笑い方を浮かべながら木乃香には全くわからない話を続ける長を震えながらも睨みつける。
そうだ、自分は次期頭主となる者。
家臣の反乱―反乱と呼ぶべき事象なのかわからないが―を鎮めるは役目だろう。

「父が何を守らぬと云うのか存上げませんが……
頭主に対してそのような無礼を働き許されるとお思いか……!!」

「ははは、一端の口を利く……。さすが詠春の娘よ。
お飾りの頭主を退けて何の裁きが下ると言うのかお教え願いたいものだ」

「おか……、ざり……?!」

詠春の口の端が歪む。

「相変わらず目出度い頭をしているのだな、次期頭主様は……
この父の元育てば致し方ないやもしれぬが」

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