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157 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/08(金) 19:52:10 ID:wSs1cGuA
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誰かに助言なり応援を求めたほうがいいだろうか?
まず直面したのはその問題だったが、刹那が事が大きくなることを望まなかった為、二人はとにかく総本山へと向かっていた。
山の向こう側から新しい日が朝日と共にやって来るのを目を細めながら見る。
明日菜は学校をさぼる絶好のチャンスとばかりにハイテンションだったので色んな意味で刹那を心配させた。
でもこの無鉄砲さが今の刹那に束の間の落ち着きを与えていたのは言うまでもなく。
非常事態であるというのにこの楽天ぶり。
状況を理解していないのは勿論ではあったが、でもそれは強い意思に基く自信から来るものだと態度で感じ取れた。
……明日菜が居て良かった。
刹那は心底そう感じていた。
「とりあえずさ」
「はい」
「ムカGぶっ飛ばしてイケパとこのか渡せや!!って言えばいいんだよね?」
「……微妙に違うような……」
「あ、本契約許せやゴルァ!のほう?」
「それも違うような……」
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158 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/08(金) 19:53:13 ID:wSs1cGuA
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目的はふたつだった。
まず詠春と木乃香の保護。
そして……あの得体の知れない感情の訳を探ること。
これがあってはいつまた逃げ出してしまうかもわからないから。
……不意に鳥肌が立ち身震いする。
明日菜との会話で抜け切った筈のあの恐怖が頭を擡げたのだ。
知らないことを知っている。
これはどういうことなのか。
すっかり忘れてしまうには余りにも鮮烈な『知っている恐怖』。
……思い当たる節はあった。
刹那には5歳より溯った記憶がない。
それはぼんやりとした記憶、というレベルの話ではない。
全く……記憶が無いのだ。
まるで切り取られたかのように、記憶に残る人生は5歳から始まっている。
その間に何かがあった?
人は強烈な恐怖を味わうと自衛本能が働きその記憶を消してしまうことがあるという話には聞き覚えがある。
……それなのか?
ならばあの人物に……何か恐ろしい目にあわされた、と?
……わからない。
しかし……顔は浮かぶ。
端正な顔立ちをしたどこか中性的な線の細い青年。
…………誰?
名前も何も本当に思い当たらないのに、口の端を少し上げて笑うあの表情ははっきりと浮かぶ。
切り取られた5年間の中に彼が……いるのだろうか。
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159 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/08(金) 19:54:14 ID:wSs1cGuA
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ひとつ、確信。
近衛家の誰かが…この人物なのだ、間違いなく。
誰かに証明は出来ないが、頭の奥で幼い記憶が叫んでいたから。
『ちかづけばまた、あいつにころされる』
死ぬ事など畏れていない。
畏れているのは自身の恐怖に駆られ主君を守りきれないことだ。
…必ず、命に換えてもお守りします。
そう誓ったのだ。
………………。
あぁ、違う。
『この命続くまで』だ。
せやろ?
……このちゃん。
立てた誓いを曲げる事など赦されない。
抹消された記憶から逃げ出すわけにはいかない。
その為に……空白の5年間を埋めなければ。
隣の明日菜を見やる。
「…アスナさんが居て良かったです」
「何急に?!」
見知らぬ恐怖を掴もう。
手探りでも、掴んだそれがたとえカケラでも。
私は一人では……ないのだから。
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