「この、ちゃん」
「うん!
ほな行こか、せっちゃん!」
満面の笑みで木乃香は刹那の手を取る。
戸惑いつつも刹那は応えた。
「う、うん、
……この、ちゃん」
初めて呼んだそれは、刹那の胸にどこかくすぐったかった…………。
桜が咲いていた。
二人の暫しの平凡な幼少期をその花びらで見守るかのように、ちらちらと。

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186 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/10(日) 21:01:48 ID:EAi6dJO1 | ||||
「この、ちゃん」 「うん! ほな行こか、せっちゃん!」 満面の笑みで木乃香は刹那の手を取る。 戸惑いつつも刹那は応えた。 「う、うん、 ……この、ちゃん」 初めて呼んだそれは、刹那の胸にどこかくすぐったかった…………。 桜が咲いていた。 二人の暫しの平凡な幼少期をその花びらで見守るかのように、ちらちらと。 | ||||
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187 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/10(日) 21:02:43 ID:EAi6dJO1 | ||||
***** 彼はまたも思いを馳せる。 手許の漆塗りの木箱を国宝でも扱うかのように引き寄せると薄く笑う。 朱の紐を解き蓋を外すと中に入っていたのは、一本の真っ白な羽根。 六寸ほどのそれは純白の輝きで彼の眼に柔らかい表情を作り出す。 壊れ物でもないのに彼は羽根をそっと手に取った。 立ち上がると独特のくぐもった笑いを浮かべながら誰も居ない大広間をゆっくり、ゆっくりと歩く。 手に入れた時は血に塗れていたが、彼が丁寧に処理を施した甲斐ありそれは今は持主の一部であった時と同程度のものとなっていた。 「…………ふふ……」 僕は僕を知っている。 何故なら僕は僕だから。 自分を知らない者などいやしない。そうでしょう? ……いや、彼女は自分の一部しか知らないか。 白き翼の意味も、そこに隠された理由も何も知らない。 うん、知らないほうが幸せってこともあるからね、無知は時に幸福だ。 だけど僕はそれが諸刃なのを身を持って知ってる。 ……ふふ、こういうのって処世術に入るのかな。 本音を言えば自分に痛みを伴う現実があるのだとしたら僕なら知りたくないけどね。 だけど彼女はきっとここに現れる。僕に会いにやって来る。 個人的にはそれを両手を広げて歓迎したいのだけど、彼女はそんな気なんか知らないだろうからやめておこう。 ……ふふ、消えた五年間を取り返しに来るのは分かっているよ、翼の姫君。 | ||||
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188 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/10(日) 21:03:26 ID:EAi6dJO1 | ||||
僕は君が愛しい。 だけどね、僕は疼いて仕方がないんだ。 君の求める過去にどんな凄惨な光景が広がっていたのか、その背景に誰の意思が存在するのか。 『迎えなければならない未来』がどんなものか。 教えてあげたくて……ッ仕方がないよ…………ッ!! …………ふふ、……あは、……ふ、ふ。 あはは、 アは、あはハははハハはははッ!!!!!! 長いこと会っていないけど元気にしているのは分かっているよ。 だって、僕は… 『僕ら』は。 | ||||
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189 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/02/10(日) 21:04:41 ID:EAi6dJO1 | ||||
……もうすぐ幕が上がるね。 血の宴、狂気の舞台。 ふふ、前座に僕もひとつ舞でも披露しようか。 間も無く訪れる、願いの日。 その終幕に嗤うは、……果たして。 | ||||
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