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219 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 19:38:29 ID:zcgxCtUo
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……いくら考えても、まるで最初から知らなかったことのように答えは出なかった。
手探りどころか、答えがあるのかさえわからない。
「気がつかれましたか」
知った声がして、顔を向けた。
「……ウチ、何しとったん?」
「お嬢様は先日急に戻っていらっしゃったのですが、お疲れのせいか着くなり眠ってしまわれたのです。
失礼ながらお召物は換えさせて戴きましたが」
「…………そ、か……」
「何か召し上がられますか」
「……ん、えぇわ。
……なんか、言うてへんかった?」
「何か、とは?」
「ウチ。なんか言うてなかった?用事……とか……」
そう言って、じ、と目を見る。
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220 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 19:39:01 ID:zcgxCtUo
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「はは、お嬢様、まだ疲れが抜けていないのではないですか?
まるで記憶喪失にでもなられたようだ」
可笑しそうに笑われ、少し赤面する。
……あっさりと言われてしまったのでなんだか真面目に考えていた自分が変に思えてしまう。
しかし、不自然な時間の流れは笑いでは済まないものがある。
「なぁ」
「はい」
持って来ていたらしい水差をカタ、と枕元に置きながら答える。
「お父様、どこにおる?
なんか……顔見たら思い出す気ぃしてきた」
「詠春様は昨夜お祖父様の元に向かわれましたので今はいらっしゃいません。
言伝があれば」
「あ、うん、えぇわ。
…………実言うとな?
……何しに来たか忘れてもーてん」
「ははは、まだお若いのにそんなでは困りましょう」
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221 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 19:39:35 ID:zcgxCtUo
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「あは。
ほんと……度忘れっちゅうんかな、ややなー。
戻って来たら言うてくれる?」
「はい、直ぐに」
「ありがとな」
「いえ」
障子がそろりと閉まるのを確認した途端、木乃香の表情は変わった。
……おかしい。
何故なら……今様子を見に来たのは明らかに普段自分の世話を焼く身分の者ではなかったからだ。
「…………審議長が直々に水差持って来てくれはるなんてな……
…………随分サービス精神満点やんか」
今自分が今夜が山の病人ならまだしも、ただふらりと帰ってきただけで―今の口振りから察するとだが―審議長がわざわざ自室にまで来るだろうか?
木乃香は近衛家次期頭主であり、かなり大切に扱われてきた正真正銘の箱入りお嬢様なのだからそこまで不思議ではないかもしれない。
……これがせめて『審議会の誰か』なら、の話だが。
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222 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 19:40:41 ID:zcgxCtUo
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否応なしに心がざわつく。
まるで今のは入り用なものを尋ねに来たというより…………
……様子見。
「…………何しに来たん……」
くぐもった独特の声が耳にこびりついたように離れない。
……とにかく、戻ろう。
何故だかここにいることは良くない予感がしてならなかった。
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