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◆AIo1qlmVDI 氏
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367 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 09:56:54 ID:vc6Qk/V/
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しかし何より恐ろしいと感じること。
それはやはり自分自身だろう。
何故自分はあの男を恐れるのか。
アレと過去に何があったのか。そしてそれらとこの一連の動きに関係はあるのか?
……握る手が汗ばむ。
「……やぁ」
「?!」
突如聴こえたその声に驚き振り向く。
が、声がした方向に人影はない。
「……?!」
ざわめく草木の中から気配を取り出そうと眼光を鋭くする。
その目の端が僅かに動く影を捉えその一秒後には夕凪の刀身が光っていた。
「挨拶したんだから返してほしいなぁ」
「……誰だ…………ッ」
受けるかもしれない攻撃を回避する為に目を瞑り神経を極限まで尖らせるが、生きた気配が微塵も感じられずに数秒後目を開けた。
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368 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 09:57:25 ID:vc6Qk/V/
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「……っ?!」
「やぁ。
って言ったじゃないか」
十寸先にまで迫っていたのはついさっきまで自分の首を絞めていた張本人、近衛兼定……!!
「あ、ボクを勘違いしてる目だ」
斬り付けてきた切っ先を中指で止めるとその男は笑った。
「兼定じゃないんだからボクは君を酷い目になんか遭わせないよ。
……あぁ、よくわからないよね?
ボクは兼定の兄……でいいんだっけ?弟だったかな?
まぁいいや、とにかく同じ顔してるけどボクはあいつじゃないからそこは誤解しないでね」
狩衣を簡略化した簡素な衣服をまとうその男は愉しげに笑いながら夕凪を離した。
男が話しているその間も刹那はありったけの力を込めていたのだが、まるで固めたセメントに固定されたように全く動かない夕凪に動揺していた為反動で派手に転ぶ。
「あはは、大丈夫?」
にこにこ笑って男は刹那の手を取り、半ば強引に起き上がらせた。
……その手はとても人肌とは思えない温度だった。
「ハジメマシテ、桜咲刹那さん。ボクは君をなんて呼べばいいかな?
あ、ボクのことは鷹峰って呼んでいいよ」
その馴れ馴れしい口調が不快で後ずさりして距離を取る。
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369 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 09:57:52 ID:vc6Qk/V/
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「?
ボクは兼定じゃないのになんでボクを嫌がるの?」
「知、るか……ッ!!」
顔を隠すように揺れる長い前髪や嫌に余裕のある態度は本当にこの男が近衛兼定ではなかったとしても刹那は嫌っただろう。
「ねぇ、ボクは君と仲良くならなきゃいけないんだ。
だってさ?闇の福音は君を好きらしくって君の敵には回らないって言うんだよ。
あんなに……ふふ、お願いしたのにヒドイヨネ?ふふ、はは……。
ボクはあんまり血を見るのが好きじゃないんだ、骨が軋む音は好きなんだけどね?
でさ、多分君はボクのお願い聞いてくれないだろ?
このままだとボクさ、君の血飛沫を見なきゃなんないんだ。言う事聞かないならやっていいってやえぞーが言っててさ」
鷹峰は腰に下げていた金魚柄の巾着から透明な袋を取り出すとその中身を五,六個口に放る。
ガリガリと口内で堅い音を立てながら笑うその顔を蹴り付けたい衝動に駆られたが、本能が言っていた言葉に耳を傾けじっと耐える。
そう、敵わぬ相手に向かって傷を負うのは愚か者のやることだ。
現にまだ刹那は未熟であり、この男―鷹峰と言ったか―に太刀打ち出来ないことを恥じる必要はない。
今やるべきなのは柔らかい態度に隠した明らかな敵意を湛えたこれからどう逃れるかを考えることなのだから。
「やっぱり角砂糖は堅くなきゃダメだなぁ、ボク」
先ほどの言葉とは全く脈絡の感じられ無いその愚痴に若干戸惑う。
辺りを見回し、木乃香がいると思われる屋敷へと通じる道が此処以外にあっただろうかと考える。
この石畳はそのまま行けば屋敷に繋がる最短経路だが、一度階段を降り階段入り口にもなっている鳥居からやや離れた箇所にある抜け道を辿っても中に入ることは可能だ。
それはまだ二人が幼かったころ木乃香が見つけた獣道である。
その頃に比べたら格段に背の高くなった刹那がくぐり抜けるにはやや骨が折れるが、目立たないという利点があった。
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