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◆AIo1qlmVDI 氏
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370 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 09:58:20 ID:vc6Qk/V/
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「冷凍してあれば文句ないんだけど普通角砂糖は常温保存だよねぇ。
ボクは自分で食べる分は冷凍しておくんだけどそれって外に持っていくと解けるからなのかな、ベタベタになっちゃって残念だけど食べられなくなるんだよ、知ってた?
ああ、でもエヴァンジェリンが出してくれた角砂糖は美味しかったな、堅くて。あれ、どこで売ってるのかな、是非纏め買いしたいね。
ボクの話ばかりじゃつまらないか、えっと……君は好物ある?」
「……さぁな」
子供のようなその空気と先ほどの無音の接近がコレの実力を浮き彫りにさせる。
本当に強い者は普段と戦闘時とで温度差があるものだ、というのが刹那の持論である。
わかりやすいのは楓だ。
糸目の柔らかい印象があれほど豹変するものも珍しい。
足に全てを込めて走れば一瞬くらいは攪乱出来るかも知れない。
階段を下りるのに何秒掛かる……?
少なく見積もっても十秒は要るだろう。
……駄目だ、時間が掛かり過ぎる……!!
刹那の躊躇いから来る苦々しい表情に鷹峰の口の端が歪む。
それは笑み……とも取れた。
「ねぇ、君は周りからなんて呼ばれてる?
ボクは名前で呼ばれないからもし君が名前で呼ばれてるんだとしたら少し羨ましいな。
あはは、睨まないでよ、怖いなぁ。せっかく会えたんだから話そうよ」
相変わらずにこにこと笑いながら距離を詰めようとする鷹峰に刹那は生理的嫌悪感を抱き始めていた。にこにこ、とは言っても彼の目は前髪で覆われており見ることが出来ないが、口調や言う内容がそう予測させる。
こんな無駄な時間を使っている事にも気が焦るし、一番最初は木乃香の審議会への直談判を止める為に此処に来た刹那にとってこの鷹峰の世間話は非常に苛立つものだった。
何がどうなると木乃香の記憶が消され明日菜にまで危害が加わりこんな得体の知れぬ者と会話しなければならなくなるのだろう?
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371 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 09:59:02 ID:vc6Qk/V/
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「……お前の目的は何だ」
「会話というのは片方が質問して片方がそれに答えることで成立するものだよね?
つまり今ボク達の間には会話が成り立たなかったことになる。
だからヒトは会話をキャッチボールに例えるのかな?
あはは、上手く例えるものだね?今ボクは君に対し会話の切っ掛けとなるボールを投げた。
そのボールは極めて受け取りやすいものだったにも関わらず君は取らずに君のボールを投げてきた。
これはダメだね、ルール違反だ。キャッチボールにはボールは一つしか使わないだろう?」
言ってからごそごそと巾着から袋を取り出し中身を口に数個放る。
刹那と顔を会わせてからもうこの作業は少なくとも7回行われていた。
「ボールと言えばこんな話を知っているかい?
ある夜のこと、殺人事件が起こった関係で深夜のパトロールをしていたお巡りさんがいたんだよ。
彼は巡回先の一つである公園でボールを蹴る音を耳にしてこんな真夜中におかしいな、と思って自転車を降り公園内に入った。
すると小学生くらいの男の子が一人でサッカーをしている。
不審に思ったお巡りさんは話し掛けた、こんな時間にどうしたんだい、ってね。
すると少年は答えた、新しいボールが嬉しくて時間を忘れていたんだ、と。
でもいくら愉しくても子供がこんな時間まで遊んでいるのは危険だよね?だからお巡りさんは少年の背を軽く押して帰る様に促した、送っていくからとでも言うつもりだったんだろうね。
出口付近の街灯まで来た時お巡りさんは奇妙なものを目にして立ち止まった。
少年のサッカーボールが妙にでこぼこしていることに気付いたんだ。
それでよく見る為に少し屈んで叫んだ。だってね、ふふ、それはヒトの生首だったからさ。
ふふ、あははは……!
それを見て少年は言った。
このボール、蹴りすぎてもうぼろぼろなんだ。おじさん、僕の新しいボールになってくれる?
そしてそれ以降も真夜中にボールを蹴り続ける音は続き、首だけがもがれた死体も発見され続けるっていうコワイ話。
知ってた?こういうの都市伝説っていうんだよね、面白いよね」
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372 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 10:00:17 ID:vc6Qk/V/
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その異様な話に背中に冷たい汗が落ちる。
何が楽しくてこんな事を言い出したのか刹那はカケラも理解できずに固まっていた。
「う〜ん、ボールに絡めて話をしてみただけなんだけど失敗だったかな?
ボクには会話のキャッチボールが出来ないのかなぁ、君は普段どんな会話してる?」
このまま黙っているとまた妙な話を始めそうなので答える。
「只の、今日何をしたかとか……そういうことだろう」
「ふぅん?
君は化け物なんでしょ?化け物はヒトと会話が成立する?
ボクもヒトじゃないから君とは話せると思ったんだけど違ったことを考えるとヒトと化け物は案外上手くコミュニケーションが取れるものなのかな」
「……黙れ」
「なんで?
君、半妖でしょ?なら化け物だろう?もしかしてまだ受け入れてなかった?
それなら悪かったね、化け物同士仲良くしようよ」
「……だま、れ」
化け物と呼ばれることに強い嫌悪感を覚えるのは人の間で生きてきた刹那にとって至極当然のことだった。
それが事実であることは理解しているが、呼ばれることは耐え難かった。
何故なら自分が化け物である事を知りながらも変わらず接してくれる者が刹那には在ったからだ。
それらをひっくるめて侮辱されたような気がしたのである。
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