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387 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 18:23:07 ID:xEODV546
「わかってる、わかってるけど……でも、僕……っ!」

思わずネギは立ち上がり、その振動で積まれた書類がばさばさと床に落ちた。

「う、うわ、ごめん……っ!」

「大丈夫、いつものことさ」

尺の長い腕を伸ばし椅子に座ったまま落ちた書類を拾いながら高畑が言った。
自分も拾おうとしたネギを腕で制し、更に続ける。

「君は今この部屋に居る僕に似ているね」

「……え?」

「この部屋は綺麗かい?」

「え?」

「綺麗か汚いかで言ったらどちらだと思う?」

「し、つれい……だけどその二択なら……汚い、かな」

「はは、その通り。
この部屋は正直汚いし、さっきみたいに君が少し立ち上がっただけでこの有様だ。
さて、ここで問題だ。
この部屋を綺麗にするにはどうしたらいいかな?」

話がずれているが高畑が話題を逸らすとは思えないので答える。

388 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 18:23:32 ID:xEODV546
「……掃除、すればいい」

「そうだね。掃除すればここは綺麗になるし、来客に僕自身がお茶を淹れることも簡単だ。
だからこの部屋は君に似ているんだよ」

「……僕に」

「ああ。
天才少年を僕なんかに例えて悪いとは思うがね」

ネギは否定するように勢い良く首を振った。
それを笑いながら高畑は一瞬天井に視線を移した。
吸いすぎた煙草の煙ですっかり染まってしまっている。
……やれやれ、掃除はたとえ話だけでは済まないな。

「何かをするべきなのはわかっているのにそれが何なのかわかっていないってことさ。
掃除しようにもどこから手を付けたらいいものかさっぱりだからね、僕は。
……つまりね。君は君の確実に出来ることをするべきだって言いたいんだ」

「僕の……出来ること」

「君はここに残り本来の義務を果たそう。
京に向かいたい気持ちは痛いほどわかっている、だけどそれで疎かにしていいことではないことを君自身理解しているから僕のところに来たんじゃないかと踏むのは行き過ぎかな?」

赤い髪を撫でて高畑はにこりと笑った。
ネギの表情は口には出さずともそう言っていたからだ。


389 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 18:24:04 ID:xEODV546
「……うん」

「僕が戻ってきていること、誰に聞いたんだい。Eかい?」

「……うん、……ごめん」

「謝ることじゃないさ、アレは危険だからあまり近寄って欲しくないだけだよ。
……ネギ君」

「何?」

「京には僕が行こう。君の代理としてね」

「た、タカミチ……っ?!」

またも書類が落ちた。
ゆっくりそれを拾い高畑は山にそれを戻す。

「大丈夫さ、今受け持っているクラスはないからね。
それにアスナ君の保護者だったんだよ、僕は。
それとも……僕では不安かな?」

「そ、そんなことないよ……!」

「じゃあ決まりだね、僕は僕の出来る事を。君は君の出来る事をやろう」

ネギは不満半分という顔で頷いた。





390 名前: ◆AIo1qlmVDI [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 18:27:02 ID:PAFbWxsH
どこまで聞いたのかはわからないが、単なる身分の差を気に入らない者が恋路を邪魔しているなどという生温い話ではない所まで知ったようだ。
そう、蠢く二つの意思、その表側を。

さて、どう動いたものか……。

ネギを帰らせてから千雨のことを思い出した。
何故彼女はネギから事情を聞いたのだろう。
結局戻って来なかったが、場所がわからなかったんだろうか……?
立ち上がり歩みを進める。
千雨が凭れていたドアの近くにある今やその用途ではなく小テーブルとして使われているチェス盤の上に盆に乗せたお茶と買った覚えのない可愛い菓子が幾つか置いてあった。

高畑は長谷川千雨という生徒がなんとなくわかったような気がして、少し笑った。
置かれたお茶に手を伸ばし口を付ける。

……京都、か。

「どうやら僕は傍観者に向かないみたいだな」

高畑は苦笑すると、一度は終った煙草をやや鹿爪面で取り出すと火を付けた。

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